ハードバップとは何か〜レコ屋のオヤジ的解説。 Sonny Clark / Sonny's Crib (Blue Note) * 無人島レコード(その2)



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✼  ✼  ✼      16th  Nov,  2018    ✼  ✼  ✼






Blue Note を中心に US盤ジャズLPを追加しました。





本日の追加盤には 私の 「無人島レコード」 が入っています。(オリジナル盤というわけにはまいりませんが。) 





ちなみに以前にも書いた通り私が行く予定の無人島は 「レコード3枚持込み可」 です(笑)。  で、これが2枚目の紹介となります。 










Sonny Clark / Sonny's Crib


(Blue Note 1576番 / United Artists
ラベル)





ジャズの中でも ハード・バップ好きな私が無人島で、「忘れられないなあ」、「聴きたくなるだろうなあ」 と思うだろうミュージシャンは? と並べてみると。





ピアノなら、ソニー・クラークかW・ケリー。


トランペットは、モーガンかバードか。


マイルスやブラウニーももちろんいいけど。





サックスは、A・ペッパーかフィル・ウッズかコルトレーン。


トロンボーンかバリトンの低音も聴きたくなるかも。


ああ、グラント・グリーンも連れて行きたい。。。






で、この中で 「中毒性」 があって聴けないとなると一番 「禁断症状」 が出てしまいそうなのはと言うと、ソニー・クラークとコルトレーンだと思いました。 (ホントはグラント・グリーンも・・・)





ペッパーやモーガンを1ヶ月ぐらい聴かないことはあっても、クラークとコルトレーンには思わずちょいちょい手が伸びていますし。







二人を1枚で聴く事ができるレコは、






この宇宙でたったの1枚。






そこで、決まったのがこれ。クラークとコルトレーンは相性的に合っていない、だからアルフレッド・ライオンもこの組み合わせは1回だけにした、というご意見も見られますが私は全くそうは思いません。






このレコードは、 「誰か」 を聴くためのものではなく、 「ハード・バップを楽しむための最高の一枚」 だと思うからです。





その上でクラークもコルトレーンもバードも、そしてフラーまでもが各々のこの時期の最高のソロの煌きを放っている点が素晴らしいのです。 私がたった1枚だけのジャズのレコードにこれを選んだ理由はまさにそこにあります。





* * * * *




 

ハード・バップって何? ハー

ド・バップとは?



ハード・バップはなにゆえ 「ハード」な「バップ」 なのか。 一説には「hardcore」(核)から来ているとのことらしいですがいまいちピンときません。





ハード・バップは、先行した「ビ・バップ」をより「大衆化」したものとあちこちに書かれています。




大衆化とは、演奏する側の自己満足ばかりでなく聴き手である大衆にも「分かり易く」することに他なりません。






英単語 『hard』 は、
「熱心な・荒れた・猛烈な・険悪な・過度の・耳障りな」 などの意味もありますが、「硬質な・冷静な・綿密な・確実な・分別ある」 などのほとんど真逆とも思える意味もある厄介な単語です。 (「hard」 < Weblio )






たかが単語一つの意味をあんまりとやかく言っても意味がないかもしれませんが、「ハード・ロック」の「ハード」は前者。 




「ハード・バップ」の「ハード」は後者の意味合いが強いのでしょう。ビル・エバンスの静かなトリオ作品もハード・バップです。演奏が熱く激しいという意味ではそもそもありません。







ハード・バップは、(ビ・バップに比して)  使う音階と音数への制約、過度な高速演奏や不規則性への制約、原曲や他のソロ奏者からの遊離への制約、独善的な長すぎるソロへの制約、 リーダーやプロデューサーによる統制 ・・・  



そうしてメンバーが協力して 「曲として作品としての完成度」 を高めようとした、演奏する側にとっては実に 「Hard (後者の意味)」 なジャズです。 






「自由奔放なソロ」などと言いながら、それは上記のような制約をきっちり満たした上での自由さ。






 「疾走するコルトレーンと訥々としたクラークが合っていない」 という論評を二人は天国でどう思っているのでしょう。






ハードバップを愛する私たちは、「統制による美(構成美)」 を求められる中で、「疾走」と「訥々」 のような相反する 「個々のミュージシャンの自由な個性のギリギリのせめぎあいの妙」 、言い換えれば 「相克と協調の間の、落としどころの妙」 を聴くことを愛していると言ってもよいと思うのですが。





もちろんそういうHardな努力の結果出来上がる作品が完璧な構成美に仕上がるとは限りません。





この作品の場合も、クラークとコルトレーン、そして他の共演者の生み出した独特の味・クセが当然あります。






しかし、完璧なものが大衆音楽として楽しいのかというとそうでもないと私は思います。






大衆音楽とはそもそも 、どこかしらの 「B級感」 を伴うものではないでしょうか。






なんとなく「中途半端」「チグハグ」「いびつ」「クセがある」・・・、これらの味があってこそ最高の大衆音楽たるジャズ、またハード・バップなのだと思うのです。






忘れちゃいけません。 






私たちは迎合されちゃった側の「大衆」だってことを。






演奏する側にはhardでも、聴く側にとっちゃジャズなんて、難しいこと考えずに気持ちよけりゃいいんです。







* * * * *



 
 
このアルバムの話に戻りましょう。





A面3曲の鉄板スタンダードはメンバー全員実に生き生きと輝いていて言うことなし。至福の22分間です。 




A-1「With A Song In My Heart」はバード、A-2「Speak Low」はコルトレーンと、フロント二管がそれぞれ 冒頭のテーマ提示から引き続き先発ソロに入るという共通の展開。



 そして3曲目のテーマはフラーが奏でる。 こういう対比、アルバムの構成レベルでの憎い "統制" はさすがアルフレッド・ライオン。



♬ Sonny Clark / With A Song In My Heart (1957年)







B面のクラーク作の2曲も実に良い出来です。



B-1 「Sonny's Crib」 は、シンプルなテーマに比してソロでは各自が歌いまくりです。 



とは言え コルトレーン~フラー~バード と続く各自のソロは非常に繋がりが良く(つまりはハードバップ的) 実に気持ちが良いです。



途中倍テンになったりして歌いまくった前3人とは対照的に4番手クラークはブルージーな落ち着きを曲に取り戻させて次のベース・ソロにうまく橋渡しします。 見事な構成です。






B-2「News For Lulu」 はいかにもハードバップといったファンキーなテーマ提示の後に入り込んでくるクラークが "最初の3音" で聴く者を悩殺状態に(笑)。 



ソロは出だしにミュージシャンの天才が現れる、あとは後半にちょいと速弾きをかまされると "大衆" はイチコロです (もちろん私も)。 



その意味ではこの曲のバード、トレーン、フラーの各ソロはみな満点だと思います。




♬ Sonny Clark / News For Lulu (1957年)





* * * * *
 




まあ、別にこんな風に分析的に聴かなくても、 「自然に気持よく乗れる」 ように「仕掛けられている」こと、それこそが真に良質なハードバップなんだと思います。




昔から思ってるんですが何が発端か知りませんが、東芝もキングもBNの売り出しにかかると必ず 『クール・ストラッティン』 をさかんに喧伝してきてますが、私はクラークならこの 『ソニーズ・クリブ』をプッシュしてきていたとしたら、今よりはるかにジャズ好きが増えてたような気がするんですが。。。  





コルトレーンだって『ブルー・トレイン』(1577番) から入るより、この『ソニーズ・クリブ』(1576番)から入った方がずっと 「次の1枚に手が伸びる」人が増えてたような。


 ねえ、そう思う人他にいませんか???





(決して『クール・ストラッティン』 が良くないって言ってるわけではありません。クラークのクラークらしさは『クール~』の方に分があります。 あくまでも初心者受け、という話ですので悪しからず。 今日の追加盤にはちゃんと『クール・ストラッテイン』も入ってますのでお願いします。。。)






それでは本日も皆様のご来店お待ちしております。





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