レコードの「カッティング」と「マトリクス」のこと。


名古屋・愛知~レコード全ジャンル買取中 !
買取ご案内①~③をクリック願います。
👉【① 名古屋・愛知県の 無料出張買取】
👉【② 店頭買取(お車OK ! 隣接🄿あり) 】
👉【③ 全国より「宅配便買取」】


 



✼  ✼  ✼     31st July,  2018    ✼  ✼  ✼





※ こちらの記事に関連して2023年2月も記事を書きました。

よろしければそちらもお読みください。










『Miles Davis / Four & More』 US盤が2枚新入荷しました。




 



右: 1966年のステレオ・オリジナル盤 (CS9253 1B/1B )
左: 1977年の3rdプレス・ステレオ盤 (PC9253 2A/1F)




右がオリジナル・ラベルです。コロンビアの目玉のようなマークが2つ入っているので、通称「2EYE(s)」。



このレコードは、山口孝氏の名著『ジャズ・オーディオ・ウェイク・アップ』で、その録音、音質が「ジャズ史上最高のライブ盤の一枚」と評されたステレオ盤をお勧めしますが、ステレオ2EYE盤は、マト1A/1Aともなると美品なら、お値段もかなりのものになってしまいます。



そこで、私がお勧めしたいのが、70年代プレスの2ndや3rd盤です。オリジナルの3分の1、4分の1とかの値段で手に入れることができます。


一口に2ndプレスとか3rdとか言いますが、音はどれほど違うのか?


 仕事柄たくさんのレコードを扱っておりますと、再発盤の中にも、「ムムッ、これは!」と思わせる盤が確かに存在すると日頃よく感じます。




レコードの「カッティング」について。



ミュージシャンの演奏がレコード盤となり我々の耳に届くまで、レコードの音質に決定的影響を与えるのは「録音」と「カッティング」だと言われています。




「カッティング」とは、録音されたマスター・テープの音を、レコード盤のプレスの「版元・原版」に刻み付けることです。



表面にラッカーを塗ったアルミの円盤を回転させながら、機械で音溝を刻み付けていきます。



マスターテープの「磁気信号」を、物理的な「ギザギザの山」に置き換えるわけですから、これは機械に任せておけば誰がやっても同じようにできるわけにはいかず、技師の調整・裁量・さじ加減で仕上がり方は千差万別になります。




こうして出来上がるのが最初の「プレス型」である「ラッカー・マスター (以下ラッカー盤)」です。



そしてこの時仕上げに技師によって刻まれるのが「マトリクス記号/番号」です。(以下「マトリクス」、Matrix=「鋳型」の意。)





カッティング技師がマトリクスを刻んでいるところ。
(Berliner Maister Schallplatten社使用許諾済)




この大元である「①ラッカー盤(音溝は凹)」は、「②メタル・マスター(凸)」→「③メタル・マザー(凹)」→「④スタンパー(凸)」 と工程を踏んで、最終的にこのスタンパーによってレコードの材料であるポリ塩化ビニールを圧迫して「レコード盤(凹)」になります。



マスター・テープ
(カッティング)
① ラッカー・マスター(音溝は凹)

② メタル・マスター(凸)

③ メタル・マザー(凹)

④ スタンパー(凸)

レコード盤(凹)



どの段階の「プレス型」も使用していくと摩耗等による劣化があるので、いずれも複数製作されます。



(1枚のスタンパーからは通常2~3000枚がプレスされます。また、1枚のメタルマザーからは5・6枚のスタンパーが作られます。500万枚売れた「およげ!たいやきくん」は17回カッティングが行われたということです。)



カッティング作業は、初回発売当初から、将来的な増産を見越し複数製造されることもあれば、思わぬ売れ行きで、後から、時には10年以上後で再度カッティングしなおされることもあるでしょう。



普通に考えれば、初回発売時にカッティングを担当する技師は、巨人マイルスの新作だということでColumbia社きっての超一流の技師である可能性が高いと思います。



しかしながら、もし後年に増産の為にカッティングをやり直す場合は、あくまで「旧作の再発」であるため、経験の浅い、技量の落ちる技師が担当することも多いかと想像できます。

 



「RVG刻印」 「RL刻印」 「DBH刻印」 「TML刻印」 ・・・



そして、ジャズやロックのレコードで、カッティング時に自らの名を刻むことが許されたほどの腕利きがいます。






「RVG刻印」で名高い Rudy Van Gelder

「RL」は Bob Ludwig   (Robertの愛称がBobなので刻印は"R"L。)

「DBH」のは David B.Hancock

「TML刻印」(=The Mastering Lab)の設立者 Doug Saxなどです。(TMLには複数の技師がいたため、全てがダグ・サックス自身がカッティングしたとは限りませんが。)



※ 「RVG刻印」については過去の記事も合わせてお読みください。
 👉 「RVG刻印」「VAN GELDER刻印」のこと。(2017/12/2)





さてここで、今回の新着盤の下の2枚の写真をご覧ください。


 
(右下は参考写真。)
 


 
これがマトリクス記号/番号です。

〔上〕 が CS9253 66年 オリジナル盤

〔下〕 が PC9253 77年 3rdプレス盤




この2枚のレコードは、マトリクスの末尾が「1B」「2A」と異なるので、当然別々にカッティングされたラッカー盤から作られたスタンパーによってプレスされたものということになります。



しかし、この2枚の盤の場合、マトリクス末尾の違い以外は、文字列の「揃い具合、踊り具合」が完全に一致している  のがお分かりいただけると思います。(ちなみに右下の参考写真末尾「1A」も一致。)




比較のために、こちらの写真もご覧ください。



同じColumbiaのマイルス、『Someday My Prince Will Come』(ステレオ盤)のマト末尾「1A」と「1D」の2枚です。






こちらは、同じ「6EYE」オリジナル・ラベルにも関わらず「315」の並びや「XSM」の次の「-」の有無で明らかですが、文字列の揃い具合が完全に異なっています。


「1A」のカッティングと「1D」のカッティングは期間をおいて行われたため、刻印に用いるナンバリング(打刻)を再度同じ番号に組み直したものと見て取れます。


つまり、「1D」盤は別の技師がカッティングした可能性、別の調整を行った可能性も高まります。





さて今回投入の『Four & More』に戻りましょう。


巨大企業のColumbiaが、巨人マイルスの新作を製造する。


おそらく、当初から後年の追加生産を見据えて多数のラッカー盤が製造され、将来の増産に備えてメタル・マザーの形で保管されたのでしょう。


(国内最大手の東洋化成さんではメタル・マザーは、場所等の都合で1年間だけ保管とのことでした。)




今回の「1B」盤と「2A」盤 (そして参考写真の「1A」) は、文字列の揃い具合の一致から、末尾のみを変更して刻印されたもので、同時期に(あるいは同じ日に)、同一の技師が同一の調整でカッティングしたものの可能性が高いと言えるのではないでしょうか。



つまり3rdプレスの「2A」盤も、音質の上で非常にオリジナル性が高いということです。





このようにレコード各個体の音質については、カッティングが行われた時期、同一のカッティング技師かどうか、同一のレベル調整かどうかが非常に大きな問題だと思います。





はたして今回、投入の2枚の『Four & More』の音の差は?



ご自身のシステムで、ご自身の耳で確かめるのがレコード・ファンの楽しみと思います。


当店は「試聴大歓迎」ですので、もちろん、ご来店いただいた方には、2枚の聴き比べをしていただけます。そして「目から鱗が落ちる」ことになるのかも???



当店では、上記の3rdプレス盤のようなレコードも、きっちりその価値を踏まえた買取査定をお示しいたしますので、「再発だから、買取価格も安かろう」と決めつけないで、ぜひ一度お持ちただければ幸いです。





それでは皆様のご来店をお待ちしております。



💿  ブログ・ランキングを頑張っています。 
↓ ↓ ↓ クリックして応援お願いいたします。