現在のレコードのカッティング・音質の課題と展望(中古レコ屋おやじ的雑感)〜 アナログマスターテープ、ヴァリュアブル・ピッチ、先行ヘッド

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✼  ✼  ✼     14th  Apr,  2024    ✼  ✼  ✼








* スマホの方はここをダブルタップ *








※ 音の聴こえ方や好みは聴く人によって異なります。
  音質についてはあくまでも筆者の耳と機材による主観です。






50年代ジャズや70年代ロックの名盤が次々とリマスターされて新品で買える時代になりました。









これらを買った方々がSNSなどで「低音がズドンと来て高域の透明感や伸びが増した」などと書かれている。









一方で「なんか薄っぺらい」「体温が伝わってこない」「CDとあまり違わない」「感動しない」などの声も少なくありません。









これは現代のレコードの製造工程上の限界が影響していると思われます。











かんたんに言えば、












『現在製造されるレコードはほぼ全て一度デジタル処理が施されている』





ということ。










デジタル化すると記録できる情報は減り、また音の加工が容易になる。










高域・低域を誇張するのが一番カンタンに脚色できる。



我々だってアンプのトーンコントロールでひょいひょいとTREBLE上げたりBASS上げたりしてなんとなく気持ちよくなることありますよね。




前にも書きましたがあらゆる機械は能力の上限値があってどんなカッティングヘッドでも1秒間に刻める情報量は限りがある。高域低域を誇張すれば相対的に中域に割ける情報量が減るわけです。












中域こそ音楽(音)を聴いて感動を生む根源





高域や低域は化学調味料、中域が昆布椎茸鰹あご出汁というか(笑)










再生時にレコード針が1cm進む間にピックアップできる情報量に性能差・限界があるようにどんなに優れたカッティング・ヘッドにも1cmの間に記録できる情報の量には限りがある。機器が進歩しより広い帯域にカット可能になれば製作側は最高域や最低域まで刻んでみたくなるもの。そうして高域や低域に多くの情報量を割くと相対的に中域に費やす情報量が減るのだそうです。人間の耳は人の声など自然界にもっとも多様に存在する中域(の倍音成分)に最も敏感にできていて中域のわずかな音質の劣化で感動の度合いが大きく減ずるものだと私は思っています。ワイドレンジ化にはデメリットもあるということです。
 












図にしてみました。













※ 年代はおおよそのものです。機械機材は一度にすべて刷新されるわけではなく寿命を迎えた旧機材から新機材に逐次差し替えられていくからです









こんな図は普通決して世には出ません。





雑誌「記事」やネット検索上位「記事」はスポンサー(=レコード会社)の「広告」だから。

(雑誌は広告だけが広告ではなく本文も広告性を持つ、ネットは検索上位になるには多額のSEO費がかかるため上位記事は基本広告性が高い)






雑誌で語る評論家もレコード会社とは一蓮托生の間柄で自分の書いた記事でレコードの売上が増えることで執筆料が賄われるのでレコード会社の不利益になるようなこと(=レコードなのにデジタル処理を経ていること)は決して書かないのです。






(※ ただ雑誌など気をつけて見ているとたまにポロッと書いてあったりする↓・笑)








(※ 一旦デジタル化と言っても決してCDレベルの音16bit/44.1kHzになるわけではありません。CDよりも記録容量や解像度の点で数倍優位な機材で処理されます)
















もう一度上図を見てください。












キーワードは「先行ヘッド」。。。










親指の先程の小さなパーツ、










レコードの音溝は「低い音・大きな音」ほど「太く深く」なります。












収録時間を長く稼ぐには溝の間隔は全体的になるべく狭くしたいが音溝が広い部分が連続すると音溝同士がくっついてしまう。










そこで低域が連続する箇所では間隔を広くとるなど「音溝同士の間隔(ピッチ)」を音溝1本ごとに変えるのです(Variable pitch)。

(併せてDepth Control という溝の深さを加減する機構もある)











従来のカッティング用のテープレコーダーには本来のカッティングする音を採取する主ヘッド(Reproducing head)の前に「先行ヘッド(Variable pitch head)」と呼ばれるものがあり採取する音の1.1秒前(←機種による)の音を読んでカッティングの際に信号の大きさによってピッチを1周毎に調整する機構を備えていました。












ところが現在は健常な状態の先行ヘッド(とヴァリアブルピッチ機構)を備えた従来のテープレコーダーがほぼ失われてしまっているためいったん採取した音をデジタル処理してピッチ幅を変えるしか方法がなくなってしまったのです。











山下達郎氏もこのことについてはラジオなどでも度々ふれ、自身のアナログテープ音源時代の作品の再発には長く首を縦に振らなかったのです。














ちなみに現在の国内の主なカッティング現場では業務用テープレコーダー最大手スイスのStuder社のA-80(初号機1970年  有名どころだとピンクフロイド『狂気』の録音などに使われた)という機種が使われていますがどの会社のHPなどの画像を見ても先行ヘッド搭載のカッティング用A-80は見当たりません。













通常型のA-80
(録音ヘッドと再生ヘッドが並ぶ  左端に消去ヘッド)







  カッティング用A-80  
イタリアA社所有機
(録音ヘッド消去ヘッドは無く先行ヘッドが見られる
テープは屈曲して走らせ先行の時間を作っている)










※ (株)ミキサーズラボ社はカッティング用A-80を所有しているそうです。またソニーミュージックは倉庫にカッティング用A-80も眠っているとのネット記事があります。














可能性は高いとは思わないが一つ将来の懸念を申し上げておきます。





先行ヘッド付きのテレコが実用化されアナログマスターテープからデジタルを経ずに純アナログ音レコードが量産されるようになったら、、、










(1)現在発売されているデジタル処理レコードは価格が暴落するかもしれない。






(2)現在高値で取引されている純アナログ音の初期盤も値段が下がるかもしれない。(すなわち通常価格で再発新品の純アナログ音盤が買えるわけだから)










まあ、個々の作品のマスターテープの保管履歴(経過年数・保管環境・使用履歴)などにもよりますので作品によって変わってくるでしょうから古い作品ほどオリジナル盤にはなかなか勝てないでしょうが (古いカッティング機材にしか出せない味わいもありますし)









【後日追記】

※ マスターテープの劣化という言葉を時折目にします。私が高校時代(44年前)に買って真夏に車の中にずっと入れっぱなしだったりもしたさだまさしのミュージック・カセットですら(お客様にも聴いてもらうこともありますが)驚くほど良い音で鳴るのに1/2インチも幅があり市販品より厚手の(= 転写が起こりにい)テープに録られ、しかも大枚はたいて版権を買った所有者によって厳重に保管されたテープがはたしていかほど劣化するものかとずっと思っていました。


このあたり複数のカッティング技師さんに問い合わせた回答を要約すると、「今日再発が要望されるような人気作品のマスターテープは慎重に保管されてきたため劣化などほとんど認められない。しかしながら先行ヘッド+ヴァリアブルピッチ機構付きのテレコを所有する会社であっても一旦デジタル化してカッティング(=マスタリング)しているのは、テープを使ってマスタリングすると音決めのため何度も再生しなければならず、その摩耗を避けるため版権(=テープ)所有者がテープによるマスタリングを望まないから」ということのようです。




「テープが劣化しているから」ではなく「今後の摩耗も避けたいため」のデジタル・リマスタリングということです。高額でテープを買い取った版権所有者としては当然の心情でしょう。
















私が60,70,80年代製のレコードを聴く魅力は中域の深みや厚みを聴くということ、加えて高域低域が鮮明なら尚善し。







いつまでも多くの皆さんが音質に疑問を持つような中域の味わいが薄いレコードが再発されているなら早晩レコードブームは終わるような気がしてなりません。










はたしてレコード製造の未来はどうなるのでしょうか ???











※  当記事は「アナログテープ音源時代」の作品の近年再発盤について書かれたもので録音からデジタルの作品について述べたものではありません。
※ 感動や音の聴こえ方・好みは主観であって人によって異なります。また聴取環境(機器・音量等)によっても異なります。
※ また、一般レコードファンが購入する量産レコードの話であって受注制作盤のような小規模制作現場の話ではありません。











【 参考資料 】




アナログ全盛時代のカッティング現場についてはこちら ↓











※  資料①はビクターの技師さんが書かれたものだが、78年時点で「真空管(カッティング)アンプもいまだに使われている」とあるのは注目。私も以前「70年代中頃まで特にビクター盤には真空管でカッティングされたと思える盤がある」とブログにも書いていたが図星だった。ビクターの(たぶんベテラン)技師は遅くまで真空管機材にこだわった頑固さが想像できて楽しい。スリーブラインドマイス初回盤もビクター系人脈の技師が関わっているので真空管の音がするように思うのだがどこかにはっきり書いてないだろうか









【 近年の国内レコード制作会社の使用機材 】



※ カッティングレース(Cutting Lathe)= 再生時のレコードプレーヤーに当たるもの。駆動モーター、ターンテーブル、ヘッド移動レール などからなる

※ カッティングヘッド(Cutting Head)= 再生時のカートリッジ・レコード針に当たる

※ カッティングアンプ(Electronic Package)=パワーアンプ、コントロール部、イコライザーなどからなる






業務用の本格的なカッティングマシンはCD時代を迎えた1984年を最後に製造が終わってしまいました。したがって現在も世界中のレコード製造現場ではそれ以前の機材(独ノイマン社製、米スカーリー社製、米ウェストレックス社製など)を修理・メンテナンスしながら使用している状況です。


(※ 近年でもドイツのVinyl Recorder社、オーストラリアのSillitoe Audio Technology社など小型簡易なカッティングマシンは各種製造されています。)






東洋化成

レース ノイマンVMS70  VMS80
ヘッド ノイマンSX74
アンプ ノイマンSAL74B




ソニーミュージックエンタテイメント社

レース ノイマン VMS70 
ヘッド   ノイマン SX74 
アンプ ノイマン SAL74




ミキサーズ・ラボ社

テレコ スチューダーA80
レース ノイマン VMS80
ヘッド ノイマン SX74
アンプ ノイマンSAL74B 





日本コロムビア社

テレコ スチューダーA80
レース ノイマンVMS70
ヘッド ノイマンSX74
アンプ ノイマンSAL74





※ ノイマン社型番の70や74は年式を表しています


※  SX74ヘッドの前はSX68だったがレコードの音はSX74導入後にガラッと変わる。70年代前半の盤と後半の盤の音の違い(特にノイマンが主流だった欧州盤や日本盤)は皆さんも感じたことがお有りではないでしょうか。(ちなみに私は70年代前半までのアナログサウンド(SX68 & 真空管アンプVMS66)がより好みなんですが、、海外で和ジャズや和サイケなど70年代前半作品初版が人気(価格暴騰)なのは状態が綺麗だからだけじゃなくここをちゃんと聴けているからだと思うのよな、、)








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