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✼ ✼ ✼ 27th Feb, 2023 ✼ ✼ ✼
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『風街ろまん』
『リボルバー』
『サキソフォン・コロッサス』
1971年、1966年、1957年発売の名盤
これら1950年代・60年代・70年代に録音発表された名作は世界中で何度も再版(再発売)されています。
たとえば『風街ろまん』ならこれまでに6回アナログ・レコードで発売されています。
1971年 URC URG-4009 =初回盤
1975年 URC/エレック URG-4009
1976年 URC UX-8005
1980年 URC/SMS SM20-4127
1996年 Vivid VSLP-4007
2017年 ポニーキャニオン PCJA-00066
『サキソフォン・コロッサス』になるとこれら製造年代(= ” 産年 ” とします。)の違いだけでなく、本家本元のアメリカ盤以外に日・英・仏・独・蘭・伊・西・デンマーク・ニュージーランド・南アフリカ・アルゼンチン・韓国の計13カ国で過去にアナログ発売されていて、" 産地 " の違いも加わってきます。
そして世界のあちらこちらで再発売されるたびに「音が違う」わけです。
『風街ろまん』も71年盤、80年盤、17年盤の3枚なら入門用のオーディオ機器でもはっきりと違いが分かるでしょう。
➽ レコードは原初のマスターテープに録音された磁気信号を、版元となる金型に物理的なギザギザの山に刻み込んで(=カッティング)プレス製造されます。
カッティングは機械に任せておけば自動的にマスターテープと同じ音に仕上がるというものではなく、熟達の職人さん(カッティング技師)がさまざまな調整をして(マスタリング)ようやくできるものです。
そしてこのカッティングは再発売(再生産)の度に行われます。(再生産に備えて長期保管されるのは原則マスターテープで金型の保管は長くて数年程度であるため。)
カッティングが違えば出来上がる音は必ず違います。
➽ 私はこの「違い」を生み出す原因は
カッティングの 「 ①技量 ・ ②機器 ・ ③理念 」
だと思っています。
① 技量とは文字通り担当カッティング技師の腕(耳、感性、その日の体調、モティベーションなども含まれるでしょう)。カッティングはまさしく職人技です。
たとえばレコード全盛の1970年代日本の大手各レコード会社は1ヶ月に300タイトル以上のレコードを発売していましたからカッティング技師も各社10数人はいたといいます。50代のベテラン技師から40代、30代、そして20代の駆け出しまで会社組織ですから技術伝承の意味でも各世代の技師がいたと思います。当然技量に差がある。またベテラン技師でも追い求める理想の音の方向性が違ったり、クラシックが得意な技師、ロックが得意な技師など個性もあったでしょう。
私は「初回盤」の音が再発盤より良いと思えるものが多いのは、腕のある技師が高いモティベーションで入念にカットしたというのが一つの大きな理由だと思います。再発盤になると若手に任されたり初回に比べモティベーションが落ちたりはある程度起こりうるでしょう。
(※ ネット上などでレコードは再発売の度にマスターテープが劣化しているから音質が落ちると音質差の原因を一義的短絡的に書いてあるものはサイト全体を疑ったほうがいい。日頃お客さんから問われ冗談に「テープの劣化もお風呂でおしっこするぐらいは影響があるがカッティングの巧拙はお風呂にバケツでペンキを流し込むぐらい音を変えてしまう」と答えてますが・笑)
② 機器とはカッティングマシン(再生するときのカートリッジレコード針にあたるカッティングヘッド、プレーヤーにあたるカッティング・レース Lathe、そしてカッティング・アンプなど)のこと。
これらが欧州系(ノイマン、オルトフォン等)か、米国系(ウエストレックス、スカーリー、フェアチャイルド等)か、またその機器の製造年代(ひいては真空管時代かトランジスタか)によって音色は全然違うわけです。
※ 一般的に米ウエストレックス系は乾いた明快な音でステレオ的音域の広がり・力強さの表現を得意としロック・ジャズなどに向き、一方西独ノイマン系は深み・潤いがありデリカシーや重厚さを特徴としてクラシックに向いているとされます。
また真空管機器で再生する音がトランジスタ機器で再生する音と違いがあるように真空管機器でカッティングされたレコードの音は違う性質が感じられます。一般に柔らかい音がすると言われがちですがこれは人の声、弦楽器、管楽器など中域の倍音成分が豊かに織りなされて自然界に近い音がするためであって柔らかいという単語では表現しきれていないと私は思います。
Blue Note BLP5035 Sal Salvador Quintet/Quartet
Fairchildのレース、Grampianのカッター使用とある
ブルーノートの国内盤だと東芝盤(BLP規格・BN/BNST規格)とキング盤(GXK規格・GXF規格)のようにシリーズとして音質に違いがあるものは技量(技師)と言うよりは機器の違いと考えるのが腑に落ちます。(東芝BN規格盤はウエストレックス3D/MK2と明示、キング盤は???)
あと、機器についてはメーカー・型式以外にも調子(ヘッドの摩耗具合、アンプ類のエージング等)機器個体の状態も当然に影響したと思います。
海外からピンク・フロイドの待望の新作のマスターテープが届く。おそらく社内一番の腕のいい技師が一番調子のいい機器で入念にカットする。これも初回盤の音が優れる場合が多い理由足りうるでしょう。
③ 理念とは、市場で成功する(=売れる)製品としてどんな音に仕上げるかという方針。
レコード会社は、その時代の自国のユーザー(聴き手)の聴取環境や再生機器を念頭に置いてレコードの音を作ったでしょう。
例えば日本なら60年代のフロア型スピーカーで居間で聴いていた時代、70年代コンポーネント・オーディオがブームになった時代、80年代に8畳間で卓上コンポで聴いた時代、現代のようにヘッドフォンで聴く人も多い時代ではレコードの音は違っていると感じます。スタジオモニターSPでのチェックだけでなくユーザーの聴取環境や機器は当然考慮されたでしょう。
また、同じイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』でもアメリカの居住環境でアメリカ製のオーディオで再生するのと日本の木造住居で日本製のオーディオで再生するのとでは全く同じ音にカッティングするのが最善とは必ずしも言えないでしょう。そのあたりも技師個人ではなく会社(カッティング・チーム)として話し合って音決めがされたのではないかと想像できます。
➽ 以下は当店ブログ、しばらく前の記事です。(一部改稿)
『サキコロ』のUSモノラル金ラベル盤が入荷したのでたまたま手元にあった盤と聴き比べてみました。
➽ 比較した4枚はプレスの古い順に、
NYCフラットのオリジナル盤
(米 1957年 PRLP7079)
モノラル金ラベル盤
(米 1964年 PR7326)
ビクターSMJX規格盤
(日 1970年 SMJX-10039M)
ビクターSMJ規格盤
(日 1976年 SMJ-6501M)
全てモノラル盤、ちょうど約6年おきぐらいの時期の盤です。
➽ 入荷した64年モノラル金ラベル盤は「手書きRVG」入り、ヴァン・ゲルダー師はサキコロのモノラル盤は初発の1957年に一度しかカッティングしたことがありません。
この64年金ラベル盤は、保管されていた初発盤のメタルマザー(から起こし直したスタンパー)でプレスされたものだということです。
※マトリクス筆跡や刻印が同じだと「同一スタンパーだ」と言うことがありますが、スタンパーは音溝も凸で保管には適さず、数千枚プレスすると廃棄される消耗品なので、正確には「同一メタルマザー盤起こしのスタンパー」です。レコードを後年に再発売(再生産)するために保管されているものはメタルマザー(音溝は凹)と元々のマスターテープです。
(カッティングが同一なので音はオリジナルと同じか、というとそうはいかないのがアナログレコードの世界の深いところ。微妙に違います。なぜ音が違うかはまた別の機会にいたしましょう。)
➽ 今回4枚を聴いてザックリと感じたのは、57年オリジナル盤は、腹にズドンと来るべきはズドンと、深く響くべき音は深く、黄金に輝くべき音は輝いて、奏者の体温や息遣いを感じるべきところはそれらがちゃんと感じられる音で鳴っているということでした。端的に言うと特に中域の倍音成分が実に豊かに記録されている。
64年金ラベルは、ごく微妙にですがそれらが全て均等に小じんまりと聴こえました。均等になのでバランスは崩れていません。オリジナル盤の直後に聴かなければ大きな差異は感じられないのかもしれません。
近年の再発盤では多くは「現代的な音にリマスター」されていきます。(当たり前ですが旧作なので音質の変化(← ”音質の向上”と謳われる)が如実でなければセールスにつながらないわけです。「前と同じ音です!」では買う気は起こらない。)
例えば、ハイエンド、ローエンドを上げトップシンバルのシャキーーーンという響きの伸びや透明感、ウッドベースやバスドラの空気を震わすかのような重量感が表現されるように。(悪く言うと「ドンシャリ」)また、従来よく聴こえなかった鈴の音のようなバックでかすかに鳴っていた小さな楽音成分を際立たせたりすることで「今まで聞こえなかった音が聞こえる!」と話題になったり。
もちろん、こういう傾向の音が気持ちよくて素晴らしいと思う方は多いでしょう。
ただ私はこのように製造された近年のレコードを聴いて特に中域(人の声、ピアノ、アコースティックギター、ヴァイオリン、サックス等)の『倍音』成分の情報損失が大きいと感じることが多いでのです。
※ とある録音に詳しい知人によると、あらゆる機械には能力の限界があるもので、再生時にレコード針が1cm進む間にピックアップできる情報量に性能差・限界があるようにどんなに優れたカッティング・ヘッドにも1cmの間に記録できる情報の量には限りがある。カッティングヘッドが進歩しより広い帯域にカット可能になれば製作側は最高域や最低域まで刻んでみたくなるもの。そうして高域や低域に多くの情報量を割くと相対的に中域に費やす情報量が減るのだそうです。人間の耳は人の声など自然界にもっとも多様に存在する中域(の倍音成分)に最も敏感にできていて中域のわずかな音質の劣化で感動の度合いが大きく減ずるものだと私は思っています。ワイドレンジ化にはデメリットもあるということです。
ここに1冊の本があります。
音とはなにか、人が音楽を感じるとはどういうことか大変参考になる本です。私にとっては少し難しい本ですが線を引いては何度も読み返しました。レコードがお好きな方ならぜひ一度手に取られると良い本だと思います。
➽ さて、だいぶ話はそれましたが国内盤の2枚。
ビクターSMJX規格盤は1969年〜72年頃の間に短期間発売された規格番号でいずれも素晴らしい音質です。(特に71年頃までの見開きジャケットの盤。会社が力を入れているのはジャケットの豪華さにも反映されるものです。)
お客様にはSMJXは見つけたら即買いだよとよく言っています。このサキコロやクワイエットケニーなど帯が無ければすごく安く売っていることもあるからです。
店頭・手元にあったSMJX規格盤
特に世界中のコレクターが追い求めるこれらのSMJXの和ジャズ名盤は、その音質も高く評価されてのことです。
参考画像 入荷品ではありません
山下洋輔・沖至 +笠井紀美子
『トリオ・バイ・トリオ+1』
(ビクター SMJX-10102)1970年
ジョー・ヘンダーソン『ヘンダーソンズ・ハビリメント』
(ビクター SMJX-10123)1971年
山下洋輔『ミナのセカンドテーマ』
(ビクター SMJX-10075)1969年
宮沢昭『いわな』
(ビクター SMJX-10068)1969年
➽ サキコロSMJX盤はもちろん米オリジナル盤とは別カッティングです。
米国から送られてきたマスターテープ(の子か孫コピー)から日本のビクター所属のカッティング技師がカットしたものです。技師の名前は見当たりません。
上の宮沢昭『いわな』を手掛けた神成芳彦氏(スリー・ブラインド・マイスで名高い)あるいはその周辺人脈の仕事の可能性が感じられる音です。
それからこちらもジャケットに記載はありませんが使われたカッティング機器は西独ノイマン社製。おそらくLV60(真空管カッティングアンプ)、VMS66(真空管カッティングレース)にSX68カッティングヘッドで切られた音だと感じます。(これらの機器でカットされたと記録がある盤と音質が近い。なお68とか66は年式を示す。)
ふくよかで芳醇、色気と深みに富んだ中域の倍音が実に魅力的です。
対してシンバルなど最高域は現代アナログレコードのほどの煌めきや伸びはなく、ウッドベースの低域も存在感は希薄です。上述したとおり相対的にあちらを立てればこちらが立たずというところでしょうか。
SX68は導入当初オーディオ評論家五味康祐氏によって良くないとされたことが独り歩きしている感がありますが私は全くそう思いません。五味氏の好み(やオーディオ特性に秀でた音)ではなかったのだと思います。
US盤のRVG刻印盤とはバランスは異なりますが、これはこれで素晴らしい音です。
この時期の和ジャズの名録音に通じる香気、色気みたいなものが感じられます。
RVG刻印盤よりもこちらが好みだという方がいても不思議ではないと思います。
(というか私自身両方手放せない。)
※ 日本でこのSX68+VMS66真空管システムが現役で稼働していた時期は数年ほどで私が個人的に大好きな音色です。VMS70(トランジスタ)が導入されると音色は変わり、さらに広帯域にカットできるSX74ヘッドが登場する70年代後半は音の傾向が大きく変わっていきます。
※ SX68はテイチクとソニーの2社だけが使用した云々という誤った記事をネット上でしばしば目にしますが、実際には日本フォノグラム、ビクター、キング(→ キング社の機材)など多くのレコード会社が導入していました。(70年代には日本の大手各レコード会社はノイマン・ウエストレックスの両方を所有し適材適所、音源と制作意図によって使い分けていたようです。なおソニーのSX68シリーズは自社製トランジスタアンプでカットしていると明記されていて音色が異なっています。)
山本剛『ブルース・トゥ・イースト』(日本フォノグラム 1978年)
なお、68年とか74年とかそんなに古い機器で良い音がなるのか? と思われる方もみえるかと思いますが、SX74は現在でも世界のトップレベルのカッティング技師が使用している現役のカッティング・ヘッドです。
(『Stereo Sound』最新刊2023年冬号でも、イギリスのアビーロードスタジオのカッティング技師マイルズ・ショーウェル氏がSX74ヘッドとVMS80カッティングレースをバッチリ調整して愛用しているとの記事があります。東洋化成さんはVMS70とVMS80が現役。)
こと音響機器に関しては機械は新しいほど良いとは限りません。ヴィンテージのJBL、アルテック、マッキントッシュ、マランツがいまだに麗しい音を奏で根強いファンを持つように。
➽ 最後に同じビクターのSMJ規格盤。
1970年代はカッティング機器についてはほぼトランジスタ時代です。
当然にレンジは広がっていますが、米盤RVG刻印盤が見せた「○○あるべきはしっかり○○」が、いくつかの要素で「○○あるべきが△△」と何か足りていない感じがします。
ただし、あくまでもそれが目立つのは「いくつかの要素」であって総体としてはやはり音楽として大きく劣っているわけではないと思います。
それは私たちが音楽を聴くときは「要素ごとに分析しながら聴いているわけではない」ということから来ていると思います。
音楽総体として自分が気持ちよければよい。
そして、感動できるかどうかがポイント。
オーディオ的な音質評論はどうしても「要素の分析」に偏りがちです。帯域ごと、各楽器の音ごとのように。専門的になればなるほど。
私はそういった要素ごとの分析にあまり気を奪われてはいけないと思っています。
SMJ盤も総体として十分によい音です。
確かに私の耳、私のシステムでは、オリジナル盤、金ラベル盤、SMJX盤には及んでいませんが。
ただ、これらの価格差を考えるとその差ほどの優劣があるのか?
私はレコードはこのように " 産地・産年 " による違いの中からお財布に合わせて自分の好みの盤(音)を探し出して自分なりに楽しめば良いと考えています。オリジナル盤とか初回マトでなくてもよいのです。
どこかワインの世界と似ている気がします。
高価な当たり年のヴィンテージのボルドーよりもサイゼリアのテーブルワインの方が好きだという人もたくさんいるでしょう。食事の場所・雰囲気や合わせる食べ物によって味の感じ方が変わるのも聴く部屋・オーディオ装置によって聴こえ方が違うよう。
あっ、私ワインはあまり飲みませんが(笑)
※ 記事中の音・音質に関する記述は筆者の印象・主観に基づくものです。個人差や再生環境・再生機器によって異なるものですのでご理解願います。
田畑貞一『Drumming Beat Pops』
(テイチク UPS-1185-J)
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