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✼ ✼ ✼ 13th Dec, 2022 ✼ ✼ ✼
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新品のレコードや、丁寧なクリーニングをしている中古レコード店で買ったレコードは問題なく綺麗な再生音を奏でてくれますから自分でクリーニングする必要はほとんどありません。
ところが、、、
中古レコード店で買った古いレコードが、
『見た目はキズもなくすごく綺麗なのになぜかチリチリいう』
という経験はないでしょうか。。。
* * * * *
今日は私が長年やってきたなるべくお金のかからないレコード・クリーニングの仕方をご紹介します。
(あくまでも「私の考え・私のやり方」です。。。)
レコードのクリーニング・お手入れには2つの「哲学」があって、
(1)何らかの薬剤で汚れを取ってそのうえ盤面保護剤・潤滑剤などを施して(液体塗布・スプレー等)音質改善をはかる。
(2)クリーニングによって盤面から汚れや過去の液剤類を完全に除去して盤面に何も残留させない。
私は(2)派です。
さて、レコードのノイズの原因は、
「溝荒れ」
「引っ掻きキズ」
「汚れ」
の3種です。
(見た目はきれいなのにチリパチいうのは静電気だという方がみえますが静電気では絶対にノイズは出ません。もちろんホコリでも出ません。)
溝荒れとは、悪い針で聴かれ続けたり過度に高い針圧をかけて聴かれ続けた結果、音溝そのものが荒れてしまったものです。大抵は盤面のツヤが失われ白っぽくなっています。
たくさん聴かれた盤はスピンドルマークで分かる
買ってきた中古レコードで「キズ」は一切ない、スピンドルマークも少ない(=つまり「溝荒れ」も起こり得ない)のにノイズが出る場合の原因はただ一つ「汚れ」です。
でも見た目にはピカピカで汚れているように見えないんだけど。。。
* * * * *
高温多湿な日本で長年にわたって保管されてきたレコードには「カビ」が付きものです。
茶シミはカビが死滅した痕跡
上の写真のようにレコードジャケットや歌詞カードに「茶シミ」が見られるものは、盤面もどんなにピカピカでもうっすらとカビがはえていたと思って間違いありません。
長年押し入れにあったようなレコードを買い取ると下の写真のように盤面にカビ跡が見られることがよくあります。
盤面に付着したカビ跡(外縁部に特に多い)
普通の中古レコード店は目視で分かる汚れだけを拭き取って販売します。その場合には綺麗に見えてもチリノイズが起こります。
盤面に残った肉眼では見えない「カビの跡」。
ずばりこれがチリノイズの原因です。
ノイズの原因が分かったところでいよいよクリーニングです。
* * * * *
昔から様々なタイプのレコード・クリーニング用品が販売されています。
ブラシ
スプレー
クリーニング液
そして最近では数万円〜数十万円もする回転式のクリーニング・マシンまで。
私はそういった高価なものは一切使いません。
(かつては色々使いましたが今はやめました。むしろ今は何が入っているか分からないが何かが入っている液体を使うのが怖い。何かが入っている以上必ず何かが残留すると思うから。遠い将来どんな影響があるか誰も保証してくれないわけだし。)
私が使うものはこれだけです。
・ガーゼ(薬局で300円ぐらい)
・ハンドタオル
・精製水(同 500ml 100円ぐらい)
・無水エタノール(同 1500円ぐらい)
・百均のスプレーボトル
・(水道水)
・(ティッシュなど)
精製水も無水エタノールも蒸発揮発すれば音溝には一切何も残留しないのがポイント。
(水道水は塩素・マグネシウム・ナトリウムなどが含有)
* * * * *
それでは私流のクリーニングの実践です。
① 付着しているカビなどの汚れ成分を柔らかくする
適量の水を盤面全体にのばしてやる
厚手で大きめのハンドタオルの上にレコードを置き、盤面全体を水で覆います。(精製水が理想だが水道水でも構わない。)
そのまま1〜5分。汚れ成分を『ふやかし』てやります。
(長くやって害があるものではないので長いほどよいとも言えます)
こちらは天ぷらをやって放ったらかしにした翌朝の調理台。
小麦粉がカリカリにこびりついています。
チリノイズの出る盤の音溝の中を拡大したらこうなのだと思ってください。ふやかすことがいかに大事か。まあ乱暴な言い方ですが「ふやかしさえすれば味噌汁でも落ちる」と。)
余談ですが、私は雨の日に愛車を洗車機にかけます。
カリカリになった羽虫やドロ粒は晴れた日にいきなり洗車機にかけても取りきれないか、むしろボディ表面に細かいキズを残してしまいます。
雨の日、愛車のフロントバンパー部分
レコードだって同じだと思います。水道で洗ってすぐに拭き取り掃除するのでは汚れが十分にふやけてなく、それで擦ると音溝を傷めてしまう恐れがあります。
( ※ ネット上にはアルカリ電解水や界面活性剤などの記述も見られますが私たちが落としたいのは「針先がノイズとして拾うレベルの大きさの汚れ」です。ミクロの科学レベルの話をしているのではなくレコードのノイズを無くしたいだけです。やってみれば分かりますが精製水だけで目的はほぼ完全に達成されます。精製水1本100円程度でLP50面使えて化学変化が一切ない。このブログ・タイトルは「なるべく安価・安全に」です。)
② ティッシュ等で水分の9割方を取り除いてカーゼで汚れ成分をしっかり拭きとっていく。
ティッシュ等で水分の9割方を吸い取ってから、折り畳んだガーゼで残りの水分を取りながら音溝の汚れを拭い取っていきます。
指の腹には結構力を入れてください。
なおこの時、右手で拭きながら左手でレコードを回していくわけですが、
このように盤自体を回すと思わぬ爪キズの元ですから、
ハンドタオルごと回しながらやってください。(そのためのスルスル回しやすいハンドタオルです)
なお、私はこの拭き取りの前に「精製水8:エタノール2」の液を盤面全体に噴霧しています。
指紋跡など手指の油脂汚れも取れやすいことが第一ですが、自分がクリーニングで使っているタオルやガーゼに付いた油脂分や雑菌が次のカビの原因になるのを防ぐためでもあります。
半乾きの布というのはどうしても梅雨時の洗濯物みたいな匂いが避けられないものです。少量のエタノールを使うことでこの菌が音溝に残ることを減らしてくれるはずです。
(当店のお客様に高校の化学の先生がみえて、レコード盤の材料のポリ塩化ビニルとエタノールは化学式上いかなる反応も起きないということです。レコード盤には黒色着色剤やその他の(企業秘密的な)物質が若干混ざっているでしょうが固体化したこれらも10%〜20%程度のエタノールの影響を受けるとは考えにくいとのことでした。また私自身100%エタノールを使って実験した結果も盤面・音に変化は起こりませんでした。以前は成分表示がまったく無かったレコード洗浄液にも「エタノール配合」をあえて謳う製品も登場しています。)
さて、これでクリーニングは終了。。。
とお思いでしょうが、実は一番重要なのがこの次です。
③ 何回かプレイする!!!
一番大事な工程はここなのです。
押入れなどで長年保管されていたレコードが買取りで入ってきて、最初にかけた時結構チリチリが出ても、クリーニングなどしなくとも2度3度とかけてやると目に見えてチリチリが減っていくという事が少なくありません。
レコード針が音溝にこびりついたカビなどの汚れ成分を掻き取ってくれているのです。
上述クリーニング直後の汚れ成分が柔らかくなったところでレコードをかける事によって、ガーゼでは取り切れなかった汚れもより容易に掻き取られるのです。
できれば適正針圧の一番重い針圧で。
1度2度の再生でなく3度4度とかけてやるとものの見事にノイズが無くなっていきます。
ただし時間がかかる。。。(汗)
なので私は78回転で回しています。(なければ45回転でも可)
以上でクリーニングの根幹部分はおしまいです。
なお、水分を使ったクリーニングを行った場合は盤をすぐにビニル内袋にしまわずに、できれば半日ほどは乾かしてください。
このほか、
➽ リサイクル店などで格安で買った汚れのひどいレコードは上述の方法の前に水道水で表面を洗ってやると良いでしょう。(レーベル紙を濡らさないための器具も売ってます。)
➽ チリノイズまでは出ないが指紋などの表面的な汚れが気になる場合は4つ折りにしたハンドタオルに「精製水9:エタノール1」程度を軽く吹き付けたタオルを少し揉んでなじませたもので強めに拭き取ると良いでしょう。
(タオルがほんの少し湿っぽいかなという程度。濡らして絞ったようなタオルでは音溝に水分が届いてしまうのでいけない。)
➽ 空気が乾燥する冬場など静電気でホコリが盤面に付着して取りにくい場合も、この湿らせたハンドタオルでごく軽く(触っているかいないか程度で)レコードを回転させながら取ってやりましょう。(私はクリーニング時に下に敷くタオルも少し湿らせます。)
最後に。。。 もちろん市販のクリーニング液も十分に安全性や効果を研究して作られたものだと思います。
ただ、液体を使ったクリーニングで大事なのは「液の量」だと思います。
見た目にはピカピカの車のボンネットがごくうっすらと汚れていることを想像してください。そこにコップ数杯の高価な洗浄液を使うより、多量の水を使ったほうがどう考えても表面をキズつけずに綺麗にしてくれるでしょう。
高価な液を少量使うより、遥かに安価な(精製)水を多量に使うほうが良い。あとは使う液体の残留成分の問題。だと個人的には思います。
以上皆様のレコード・ライフにお役に立てれば幸いです。