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➽ さて、現在店頭にあるこの2枚のレコード。
左: Elmo Hope 『Informal Jazz』
(Prestige PRLP-7043, NM-/NM)
右: John Coltrane& H.Mobley 『Two Tenors』
(Prestige PRLP-7043, NM--/VG++)
リーダー名、アルバム・タイトルは違えど、レコード番号は同じ。同一内容、別ジャケの2枚です。
左が1stジャケ(1956年 ラベルはNYC)。
右が3rdジャケ(1964年、ラベルは紺。3rdにはNJラベルも存在)。
(このレコードは、同一番号でもう一枚2ndジャケ(1962年)もあり、さらにPR-7670番でも別ジャケ再発されているので、ややこしいですが。)
さて、前回の「カッティングとマトリクス」の話の続編になります。
( > 当ブログ 『レコードのカッティングとマトリクスのこと』 )2枚のレコードの「マトリクス」部分を見てみましょう。
上が『Informal Jazz』、下が『Two Tenors』です。
いずれも手書き(手彫り)で「RVG」と「PRLP-7043-A」(-AはA面の意)と刻まれています。
「RVG刻印」はおなじみのRudy Van Gelderがカッティングした証左。
2枚の筆致は完全に一致しています。
つまり、3rdジャケの『Two Tenors』も、初回盤『Informal Jazz』発売時にヴァン・ゲルダーによってカッティングされた同一の「ラッカー・マスター」を大元にしてプレスされたレコードであるということを意味します。
よく見ると『Informal Jazz』には「RVG」の左に「B」の文字があります。
「B」のみ活字打ちで、盤面では「凸」で現れています。
後年にプレスされた『Two Tenors』には「B」がありません。
もう一度、カッティングからレコード盤に至る版型の製造工程をおさらいしてみると。
マスター・テープ
⇩ (カッティング)
① ラッカー・マスター(音溝は凹)
⇩
② メタル・マスター(凸)
⇩
③ メタル・マザー(凹)
⇩
④ スタンパー(凸)
⇩
レコード盤(凹)
『Informal Jazz』盤面の「B」は音溝とは逆に「凸」で現れているので、②か④の段階で刻印されたものです。(おそらく④)
このことから考えると、
オリジナル 『Informal Jazz』製作時、①ラッカー・マスターにも②メタル・マスターにも③メタルマザーにも 「B」は刻印されず、③メタル・マザーは保管にまわされた。(音溝が凸である②④は保管に適さない。)
「④スタンパー」に初めて「B」が刻印され、オリジナル盤『Informal Jazz』はプレスされた。(つまり「B」はスタンパー番号)
後年の「Two Tenors」は、保管されていた「③メタル・マザー」から新たに起こされたスタンパーでプレスされたため「B」刻印がない、ということになります。
Blue NoteやPrestigeは、今でこそジャズ黄金時代の名門中の名門で誰もが知る存在なのですが、当時はあくまでも「マイナー・レーベル」。
初回発売時に一つの作品で何枚も「ラッカー・マスター」を切るほどの製造枚数がない作品がほとんどでした。
したがって、昨日のColumbiaのマイルスや、ロックのヒット・アルバムのような(ラッカー・カット時に刻む) マトリクスの「末尾番号」はありません。
エルモ・ホープ名義で出たこのレコードも初回盤はおそらく数千枚レベルのプレスだったのでしょう。
したがって後発盤でも初回カッティング時のマザー盤が保管されていて、それが十分使用可能だったということです。
値段の差は、何と30倍。
ウーン、よほどのコルトレーン収集家でない限り「Two Tenors」でいいのかも。
完全な「別・カッティング」の場合。
ドナルド・バード&ジジ・グライスのColumbia盤『Jazz Lab』です。
左が、1957年のオリジナル盤、右がColumbia社からの正規の再発盤で、レコード番号も同じ「CL-998」。
マトリクス末尾は「1F」と「2A」。いかにも連番のような末尾番号。しかしながら、オリジナル盤は「ナンバリング打ち」、再発盤は「手書き」になっています。
当然、再発盤は初回発売当時のカッテッィング盤ではなく、後年、別の技師が新たにカッテッィングしたものと考えられます。
さて、今回の「Informal Jazz / Two Tenors」と「Jazz Lab」
オリジナルと後発盤の音の差は・・・
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